コラム

ブラインドサッカーの選手はどうやってボールの位置を判断しているのか?

東京オリンピック&パラリンピックも終わって数週間。

あの感動の余韻もそろそろ落ち着いた頃でしょうか?

 

みなさんもなんとなく感じたと思いますが、これまではメインはオリンピックでパラリンピックはサブみたいなイメージがあったと思います。

 

だけど、今回のパラリンピックは非常に注目されていたんじゃないかなぁと感じています。

もちろん、まだまだ記録だったりダイナミックさではまだまだオリンピックの競技の方が派手な部分はあるとは思いますが

 

選手の進化や装具の進化によって一部の競技ではオリンピックの記録よりも近い記録や上の記録を出してしまう競技もあったり

そうではなくても、様々なハンデを持っているにも関わらず

「なんでそんなことができるの?!」

と驚かざるを得ないパフォーマンスを目の当たりにして

 

パラリンピックの可能性を感じた大会だったかもしれません。

 

そんな競技の一つであるブラインドサッカーについてお話ししたいと思います。

ブラインドサッカーとは

いわゆる「見えないサッカー」です。

ゴールキーパー以外が全盲の選手で、アイマスクを装着し、音の出るボールを用いてプレーします。「ブラインドサッカー」「ブラサカ」は、このスポーツの国内での普及を目指し当協会が名付けました。

パラリンピックでは「5人制サッカー/Football 5-a-side」という競技名で海外では「Blind Football」とも呼ばれています。

視覚障がい者スポーツのクラス分けの用語ではB1クラスに該当します。

ボールから音が出る・・・とはいっても、目の見えない状態でどこにボールがあるのかを把握することがいかに難しいかは想像すればわかりますよね。

例え通常のサッカーのトッププロ選手を連れてきたとしてもブラインドサッカーの選手のようにはできません。

 

そんなブラインドサッカー(視覚障害者サッカー)の選手が動き続けるボールの位置をどのように判断しているのか、その詳細が明らかになりました。

ポイントは

頭の動かし方

であり、視覚障害のない人(晴眼者)に比べて頭部をより大きく下向きに回転させることで、音を発するボールの位置を正確に判断しているというのです。

筑波大学のグループの研究結果であり、「Scientific Reports」に論文掲載されるとともに同大学のサイトにニュースリリースが掲載されました。

 

位置が変化し続けるボールの位置をどうやって把握している?

アイマスクを付けてプレーするブラインドサッカーでは、聴覚情報をもとに音源の方向や距離を特定する「音源定位」が重要な能力の一つと考えられています。

例えば複数のスピーカーのうちどの方向から音が出ているのかを判断するのも「音源定位」の能力なのですが、ブラインドサッカーの選手が晴眼のサッカー選手や一般の晴眼者に比べて、正確かつ素早く音源定位を行うことを明らかになっているようです。

 

しかし、スピーカーの音の出所を判断するテストではあくまで固定された音源でのテストでしたが、サッカーでは動く音源に対してどのように音源を定位しているのかはわかっていなかったため、移動する音源の定位が求められるボールトラップ課題を用い、ブラインドサッカー選手がどのように音源を定位しているのか、一般の晴眼者と比較しながら検討しました。

 

さまざまな条件でのトラップで頭部角度を測定

研究の対象は

ブラインドサッカー選手6名(競技経験7.4±3.5年)

一般の晴眼者6名(ブラインドサッカー未経験)。

<課題>

4.5m先から左右に転がり出るボールを、アイマスクを付けた状態で右足のインサイドでトラップする。

ボールは、可動式の投射台のレール上の三つのいずれかの高さから手動で投射され、ボールの速さは平均約2.4m/秒、2.2m/秒、1.9m/秒。

ボールの投射方向は、右ファー、右ニア、左ファー、左ニアの四つの範囲を設定。

ボールの速さと投射方向は試行ごとにランダムに設定し、1人あたり36回試行。赤外線反射マーカーを頭部に貼付し、矢状面(身体を左右へ垂直に分ける面)における頭部角度を測定。

ボールトラップの正確性は、ボールをトラップした時の右足のつま先と踵に貼付されたマーカーの中点が、ボールの中心から左右の方向にどれだけずれていたか(絶対誤差)を評価。

 

頭部をより下向きにすることでボールの位置を判断

研究の結果、ブラインドサッカー選手におけるボールトラップのエラーは、一般の晴眼者に比べて有意に小さいことが確認されました。

 

また、ボールが投射された瞬間の下向きの頭部角度については、両群に有意な差はみられませんでしたが、ボールトラップの瞬間の下向きの頭部角度や振幅(ボールの投射からトラップまでの時間における頭部角度の変化)は、ブラインドサッカー選手(下向きの頭部角度37.3±17.2度、振幅36.2±14.5度)が、一般の晴眼者(下向きの頭部角度14.3±15.8度、振幅18.8±8.4度)に比べて有意に大きいことが明らかになリマした

さらに、ボールが投射された時点を基準とした下向きの頭部角度の変化は、ボールが投射された直後からボールトラップの瞬間まで、ブラインドサッカー選手が晴眼者より一貫して有意に大きいことが示されました。

このことからブラインドサッカー選手はボールを的確にトラップする際に、より大きな下向きの頭部回転を用いて頭部をボール方向に向けることで、より正確に音源を定位していることが示唆されました。

さらにブラインドサッカー選手は、ボールトラップの際に、接近するボールの動きと下向きの頭部回転を合わせ、ボールを頭部に対して一貫した方向に保っていることが示唆されています。

 

他の音が混在する状況でどうやってボールの位置を判断?

いかがでしたか?

これまでも顔の正面で音を聞くことで音源の位置をより正確に判断できるようになるということはわかっており、動く物体に対しても同じことが言えるということがわかりましたが、そもそもボールだけでなく、他の選手の声や声援など様々な音が入り混じる中でボールの方向に頭を向けられるというのはまだまだわかっていないようです。

これらが明らかになることでさらにブラインドサッカーのレベルが上がるだけでなく、その他の音が重要なファクターになるような競技への応用もできそうですね。

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