コラム

パラリンピックメダリスト、始球式で豪速球?国枝慎吾選手の上半身の使い方とは

 

オリンピックとパラリンピックも終わって1ヶ月。

活躍した選手は各メディアで引っ張りだこになっていた選手もいたと思いますが、

そんな選手の1人であり、車椅子テニスのメダリスト・国枝慎吾選手が

プロ野球の千葉ロッテ戦vs東北楽天戦の始球式に登板しましたね。

始球式といえばスポーツ選手だけでなく、俳優や芸人、時には一般の方々から選ばれたりと様々な人が投げるわけですが

18.44mも離れたキャッチャーに向かってしっかりとストライクを投げることはもちろん難しくてとんでもない方向に投げてしまうことも多いですし、女性やお子さんだとそもそも届かないなんてことも多いですよね。

そんな始球式にメダリストとはいえ車椅子に乗った国枝選手が登板とは・・・

一体どんな球を投げたのでしょうか?

 

野球、テニス、バレーは共通の動作

流石に140km/hを超えるような球は投げることはできなかったようですが、それでも捕手を勤めた角中選手が驚くような球を放ったようですね。

投球に限らずほとんどのスポーツは下半身から力を生み出し、それを上半身、そして腕に伝えていくことで最終的に大きな力にしていきます。

しかし、国枝選手のように車椅子に乗っていては下半身の力は使えません。

にも関わらず、しっかりとノーバウンドで強い球を投げる秘密はやはり上半身の強さと使い方ですね。

野球の投球、テニスのサーブ、バレーのスパイクなどオーバーハンドでのスイングスポーツでは共通のモーションがあるため、実際にピッチングのフォームの修正のためにテニスのラケットを振るというのは非常にポピュラーな練習です。

そんな共通のモーションがあるテニスの国枝選手の車椅子上でのピッチングフォームはどうだったのでしょうか?

 

投球側の上肢は肘を守る理想的な使い方

まずボールをグラブから話してコッキングに入る際にはグラブ側を高く上げていますね。

グラブを高く挙げること位置エネルギーを確保して、この後の投球側の腕を振っていくアクセラレーション期での加速に繋げていきます。

そして、投球側の腕のコッキングでの腕の使い方が素晴らしいですね。

野球では一時期、肘から挙げていく「インバートW」という方法が流行ったのですが、近年では肩や肘の故障のリスクが高いとされています。

そこで現在は「スタンダードW」という手から挙げる方法が主流になっています。

国枝選手はテニスのおかげで完璧なスタンダードW、腕が90度外転位になった時には肘よりも手が上になっていますね。(写真2)

さらにこのコッキングフェイズで体幹を投球側に捻っていますが、しっかりと下半身は反対に動いて、いわゆる「割れ」が生まれています。

投球側の腕を振るアクセラレーション期で最初に注目すべき点は肘の角度です。

肘が90度のままアクセラレーション期始まって、それ以上深く屈曲させることがありません。

肘を90度以上曲げると内側側副靱帯への負担が大きくなるため、肘を守る意味では理想的と言えます。

そして、しっかりと胸を張っています。

胸を張ることで大胸筋の伸張反射を誘発し、投球のエネルギーを蓄えるとともに肩甲骨の後傾も出るため腕のしなりにも繋がります。

国枝選手の場合は腕のしなりはそこまで大きいわけではありませんが、これは車椅子に乗っていることで身体の十分な重心移動や回転を出すことができないからだと思われます。(写真4)

またフォロースルーではグラブで身体を止める動作があり、一般的にはあまり良いモーションではないのですが、これも車椅子のためフォロースルーが大きすぎると転んでしまうからでしょう。

実際に国枝選手のフォロースルーでは車椅子が持ち上がっていますよね。

 

ピッチングの癖を直すならテニスラケットを振ろう

いかがでしたか?

車椅子があることでどうしても力の発揮や可動範囲という点で速度を上げていくことはできませんが、それでもでしっかりとした投球ができる上半身の使い方は本当に理想的でブレイヤーや指導者には取り入れてほしい動きだと思います。

特にコッキングフェイズで肘から上げている人、さらに肩や肘を痛めてしまっているという人はテニスラケットでシャドーピッチングをすることをお勧めします。

パラリンピックメダリスト、始球式で豪速球?国枝慎吾選手の上半身の使い方とは

-コラム

Copyright© EPoch | エポックスポーツ , 2024 All Rights Reserved.