サッカーやバスケットボールのディフェンスではこのようなシーンがよく見られると思います。
ディフェンス側は腰を落として低い姿勢を取り、相手のアクションに備えるわけですが このような低い姿勢を取ると身体に力みが入り、動き出しが遅くなると言う指導者も数多くいます。 メッシとマルセロの1対1の時の姿勢はどちらも棒立ちのような姿勢で対峙しているので尚の事そのように言われることも多いと思います。
しかし、野球の盗塁で腰を落とさずに構える選手はませんし テニスでもこのようにトップ選手は低く構えています。
では実際に低い姿勢と高い姿勢ではどちらの方が良いのでしょうか?
<抜き動作と低姿勢動作の比較>
古武術の動きを研究している三重大学教育学部の『古武術における位置エネルギーを利用いた横移動動作の効果』では通常の母趾球で地面を蹴って移動する「蹴り動作」と比較して、古武術で使われる膝関節を脱力し位置エネルギーを利用する「抜き動作」の有用性を報告していますが、同時に両膝を70度屈曲させた「低姿勢動作」での比較もしています。 こちらの図は「低姿勢動作」と比較した「抜き動作」の各測定の相対値です。
この研究報告によると ①動作時間では「抜き動作」が0.68sec±0.10で「低姿勢動作」が0.72±0.06secで有意差はないが「抜き動作」の方が僅かに速い。 ②移動速度では「抜き動作」が100.3±17.2cm/secで「低姿勢動作」が102.9±12.7cm/secで有意差はないが「低姿勢動作」の方が僅かに速い。 ③ストライドでは「抜き動作」が67.8±9.1cmで「低姿勢動作」が73.6±8.6cmで優位差はないが「低姿勢動作」の方が僅かに広い。 とあり、動き出しは「抜き動作」の方が速いけれど、移動速度は「低姿勢動作」の方が速い。 しかし、有意差はないので、どちらでも構わない可能性が示唆されます。 しかし、筋放電量や力積では「抜き動作」の方が少ないため、「抜き動作」の方が「低姿勢動作」と比べると疲労の少ない効率的な動作であるということがわかりますが、それも有意差はないという結果になっています。
統計的に有意差はないけど、実際には大きな差?
いかがでしたか? この結果からは高い姿勢から「抜き」で動くことと、あらかじめ低い姿勢で構えて動くのでは速さに関しては有意差はないということがわかりました。 ただし、有意差はないけれどもスポーツの世界ではその「僅かな差」が勝敗を分けることも多々あります。 特にストライドでは平均で5.8cmも「低姿勢動作」の方が広いことになります。 サッカーやバスケ、バレー、バドミントンのように1歩の動きでボールに触らなければいけないような競技では大きい差になると思います。 そう考えると低姿勢で構えることの方が競技ではメリットがあるのではないでしょうか? EPochスポーツ事業部ではこのように研究で報告されているデータをしっかりと取り入れた指導をしています。 本当に意味のある指導を望んでいるアスリート、チームの方はぜひご相談ください。